森の話
もう1羽のふくろう

相変わらずニレの木の下は賑やかだ。
バズーカ砲ならぬレンズが並び防寒着に身を包み寡黙な人達がシャッターチャンスを狙っている。
捕って食べられるわけでもないことを知っているのか、森の賢者は悠々と時には、 こんなポーズでどうかしらと首を動かす。
飛び立たせようとするのはいけないよ。マナーを守って!

積雪5p。気温−1度。青空がのぞく散歩日和。
今日は長靴着用。一生懸命歩くと汗ばむけれど、双眼鏡を覗いているとアッという間に寒くなる。
森の中は盛んに伐採が行われ重機がうなっている。
ユンボの先がロボットのようで木を抱きかかえ、根元をチェンソーで左右から切り、木を持ち上げ倒し、 余分な枝や皮をそげ落とし適当な長さに切って積み上げ、5分に1本は、ハイ出来上がり。
あたりは松ヤニの臭いが立ちこめ、何とも哀しい気持ち。
アカゲラとカケスが、やけにばたばたとしている。

10分ほど歩いただろうか。
ふとトドマツを見上げる。ふくろうでも休んでいないだろうかと思いつつ。
ちょうど枝分かれしたところに何か白っぽいものが。
まさかね。念のため双眼鏡を覗いてみる。あれっ。いたぁ〜!!間違いなくふくろうだ。
道端から数mのさほど太くもない松、 地面から5m位に微動だにしないふくろうが午後の陽射しを浴びていた。
あぁ、やっぱり居た。
以前、幌延町の写真家で、名前は忘れたけれどふくろうの写真集を出版した。
その写真の中のふくろうは雪の降る中、マツの枝に止まっていた。
ニレの木のふくろうしか見たことのない私は絶対松の木にとまっているふくろうを見たいと かねがね思っていた。
ここのところ松の木ばかり見上げていたが、とうとう出会えた。
ニレの木のふくろうから2キロほど離れている。親子ではないようだ。
行きつ戻りつ何度もふくろうを見上げた。夢ではない。
近いうちにカメラを持ってこよう。その時また会えるだろうか。
すっかり体は冷え切ったけれど、最愛の人に会えたような、心はポカポカ。
森に来る楽しみがまた一つ増えた。

ゆっくりキタキツネが横切って行った。

野幌原始林にて(2001.12.5)

 
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