森の話
北限のブナ林
   

 森は永い眠りから覚めた。
枝先にはまだ伸びきらない若葉がつぼみの時の茶色の花弁状の皮を残し黄色に光っている。

黒松内町歌才自然の家から展望台に続く緩やかな道。
タチツボスミレが見事に紫の絨毯を敷き詰めたように樹々を見上げている。
展望台から1q、目指すはブナ林。
竹の子が足元でぽきりと折れる。少し細いけど皮をむいてかじってみると春の味がする。
「これがきっとブナでしょう」「ちょっと幹が白すぎ」
目が慣れてくると「あるある」幹は灰白色でなめらか。若葉は柔らかく縁はギザギザ。
太いもので60p以上もあり枝がたくましく伸びている。
これが北限のブナ林。深く息を吸い込んでみた。

山道は秋のような落葉がふかふか。どんどん下る。 展望台から眺めたとき、目の前にあった温泉の建物も遠ざかり、すっぽりと木々に包まれた。
とうとう谷底のようだ。澄んだ流れの上に小さな橋が架かっている。
橋を渡ると入林届けのポストがある。
なんか変。街から遠ざかっている。道が違うのか。
困ったと思っていると青年が橋を渡ってきた。
「分岐で左へ登って・・・」疑獄に仏。

露天風呂からブナの木を見る。
薄緑色の葉に心がなごむ。
何と贅沢な一時なのか。
今度はしっかり葉が生い茂ったたくましいブナを見に来よう。

 
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