森の話

5月の森   

花が咲き始めた。日一日と変わりゆく森は目が離せない。
10日前は雪がちらつき初鳴きの鶯が不釣り合いで、それでも花たちは先を競っていた。

中央線から瑞穂の池に向かおうと歩を進めたが、分岐点まで来ると意に反して足は反対方向に行く。
足を踏み入れた森は、針葉樹の絨毯が足底に心地よい。
声高に春先取りの小鳥たち、辺り一面紫のエンゴサクが咲きみだれ、 福寿草も背を伸ばし、エンレイソウが奥ゆかしくおじぎをし、次から次へと出番を待っている。
目の前をかすめた物体を双眼鏡で覗くと、黄緑の衣装をまとい赤いベレーのヤマゲラが餌探しをしている。 鳥たちの羽ばたきも雛のか細い声も、仲間との語り合いも、どんなささやきでも聞こえてくる。
そこには今までにない温かい空気が流れ、それらに囲まれている幸が満ちあふれる。

ミヤマエンレイソウ

エンレイソウ
    
ニリンソウ

ナニワズ

最近、森を歩くと「いったいどうしてなの!」と思うことに出会う。
足元には尖った砂利が敷き詰められ注意深く歩を進めることになる。
冬のうちに伐採が行われた森の中はスカスカで、ひどい所はひろっぱが幾つもできている。
その広場から幼鳥のカケスがちょっと不器用に低空飛行で横切った。
病害のためとは思うけど、植樹で暗い自然の森は戻らない。
あまりにもひどい光景だ。
「ふれあい自然センター」が大沢口にでき、そこを見て、森を見て知識として判ることは多いが、 それよりも、施設が無いのは、皆が森を大切にしているからと言えるように。もっと駐車場は森から離れた所で構わないと思う。舗装するために見事な赤と白の花が咲くウツギが寒くなってから移植されたが、あれは育つのだろうか?
「1本の木を切るとね、それが育つまでには長い年月がかかの。
花がきれいね、耳を澄ませてごらん、餌を探している音も聞こえるね。とっても気持ちがいいね」 子供たちにも、それで良いんじゃないの。

センターの周りでは、確かに工事や雪害で折れた木々をくくって補修はしてあるが、1歩森の奥に入ると 伐採で使われたオイル缶が転がり、おやつを食べた袋物が捨ててあり、ガソリン臭が立ちこめている。
「森を守るための伐採です」そうは言っても現実を見てください。
春に咲く小さな欄はタイヤの下敷きになり哀れです。
瑞穂の池の橋も立派に掛け替えらた。
でも、でも、それは見事な桜が何本も犠牲になり、「桜が見たければ何処にでもあるでしょう」と別の桜を指差されても絶句してしまう。
本当に森を愛する人達がやったことなのですか?


野幌原始林にて(2001,5,1)

 
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