森の話
1月の森
   

天気予報に反して少しのぞいた青空が広がることを期待し森に向かう。
5分もたたないうちに目の前が遮られ、ワイパーが忙しく動き前の車のライトを追う。
困ったことになったと思いながら森への直線道路に入る。
一時停止を見落とさないよう左折し、激しく降る雪の奥に境目をなくした森はひっそりとある。

晴れ間を見てスキーをはく。
入り口のハルニレを真っ先に見上げる。
頭に雪をかぶり背を向け一層丸くなって、ふくろうはいつもの場所に居る。
こんな雪の日は何を考え首をすくめているのか。
「寒くないのかい。せめて頭の雪でもほろってあげられたらねぇ」
心なしか肩が動いたように見えた。

20分ほどの下りを行くとスキー跡は消え、間もなくスノーシューの跡もなくなり、これから先は一人旅になる。
昨日から積もった雪は膝下まで達し、ゆっくりラッセルしながら進む。
モノクロの森の中は究極の美しさであふれている。
天に伸びゆく主張する枝、木を覆う雪の付き具合、寄り道をしながら奥へと続く動物の足跡、 落ちきらない枯れ葉、覗いてみたくなる雪穴、ふと笑ってしまうような雪の造形、どれを見ても楽しい。
どこをとっても絵になる。

降ったり止んだりの雪で景色が変わり、どこにでも宝物があるように陽の光で森が変わる。
時折枝の雪が落ち、その雪が雪を誘い雪煙となって驚かす。

5`の道のりを2時間ががりでたどり着く。
独り占めできた森。 ふくろうに別れの挨拶をしていると、汗をかいたのがうそのように体か冷えてくる。

雪が止み森の外は風が強まっていた。

野幌原始林にて

 
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