森の話
春のカエルとクマゲラ
   

2000年の雪解けが進み、森の中をスキーで歩くことはできなくなった。
でもまだ雪は残り、靴をぬらした。
雪解け水が小川を作り、その音は元気な森の音に聞こえる。
一方冬の間に雪の重みに耐えかねたのか無惨な姿をさらけ出し倒れた樹の大きさに驚かされる。

確かこの辺で聞こえたはずだとしばらく耳を澄ませてみるが聞こえない。
歩き出すと呼び止めるように「ウィィウィィ」と鳴く。
そんなことの繰り返しで水辺を覗き込むと、もぞもぞと黒い固まりがあちこちでうごめいている。
ちょっと気持ち悪いけど怖いもの見たさで目を凝らすとカエルだ。
こんなにたくさんのカエルに出合ったのは始めて。
水面に目だけを出してこちらを見ている。まさか飛び出しては来ないと思うけど一歩後ずさりしてしまう。
その声は大合唱に代わって一層けたたましくなった。

森の出口で森中に響きわたる力強いドラミングが聞こえる。
クマゲラが近くにいるらしい。「キィーン、キィーン」と甲高い声もする。
何羽か居る気配。首が折れ曲がるほど空を向くと黒いものがかすめた。
大きさといい止まり方といいまさしくクマゲラだ。
双眼鏡で覗くと頭の赤い帽子が確認できた。
なんてラッキーなんだろう。
会いたくてもなかなか会えないのに。

今年もいいことがたくさんあるような気がする。
咲き始めた水芭蕉の清楚な白が眩しいほどに・・・。

(この日の夕刊を開くと春を呼ぶ歌声エゾアカガエルの見出しで産卵が本格的に始まり、 メスを呼ぶ特徴ある鳴き声が聞こえたと載っていた。)


 
 森の話目次へ
inserted by FC2 system